夏の騎士

 神戸への出張は電車と決めていた。行先へは前回ナビ設定して自分の車で行ったのだが目的地に連れて行ってくれなかったからだ。ポートアイランド付近は上下感覚がややこしくて嫌いだ。その為に電車で時間を有効に使うには本を買おうと思って3冊買った1冊が百田尚樹最後の小説と言われる「夏の騎士」である。

 三雲駅から読みだして行きは大阪駅くらいまででおよそ三分の一ほど読みいったん休憩、残りは帰りに一気に読めたので2時間強で読破できた。僕のようなおっさんにも活力を与える小説。最後は予想もしない結末。日本一のストーリーテラーと言われる百田作品はなるほど良く出来ている。このメッセージ性は堕落者である僕のようなおっさんにはよくわかるのだがはたして小中学生にこのメッセージ性が伝わるのかが疑問である。百田自身が自書「大放言」で提言している部分も織り込まれていて、少なくともこの愛すべきハゲのおっさんは伝えたいことを世に伝えるという手段として小説を選んだんだと確信した小説である。その意味では出せばベストセラー連発の作家の中でも異例の存在だなと。

 もちろん時間をかけた苦心の結晶である「永遠のゼロ」ほどの重みはないが夏らしい軽快な作品。男子はおっさんも含めて読むべき1冊である。私は全国の予備校生に薦めたい。

おしまい