マジック・サマー

 ドアーズのジム・モリソンが死んでからほぼ半年後にアメリカで発表された2枚組アルバム「WEIRD SCENES INSIDE THE GOLDMINE」のジャケット帯には1967年の夏はマジック・サマーだったとある。理由はビートルズの「サージェント・ペッパーズ」とジェファーソン・エアプレインの「シュールリアリスティック・ピロウ」とドアーズの1stアルバムが発売されたからというのが理由だ。マジック・サマー。ビートルズやジェファーソンはともかくとしてもドアーズにはぴったりの言葉ではないか。

 このような書き出し(うろ覚えである)で始まるこの文章は僕が初めて買ったレコード(まだCDはなかった)、ドアーズのベスト盤「クラシックス(廃盤)」のライナーノーツで松村雄策さんが書いたものである。この書き出しが好きだった。高校生だった僕は読書家でもなく文体なんかまったくわからなかったがそんな僕でもその世界に吸い込まれていくようだった。松村さんの文章の殆どはプロレス、志ん生、酒、昔からの友人という内容だった気がする。そんなロックと何の関係もない話を延々と描き、最後の最後に本論のレコードやバンドのことを書いていた。僕は高校生の日常からかけ離れたその文章を目を輝かせながら読んでいた。僕にとって松村さんはロックの歴史や知識を教えてくれた以上にいつまでたってもカッコいいオトナなのだ。脳梗塞からそうとう回復されたという話だがこのくそ暑いコロナ禍でもお元気なのだろうか?

 暑くなってくるとマジック・サマーを思い出す。そしてドアーズは1971年を最後に永遠となった。僕にとってはいつまでも新鮮であり衝撃である。初めて買ったアルバム「クラシックス」一曲目は「STRANGE DAYS」。

 永遠の名曲「水晶の船」。このピアノ旋律は神。詩には女神が宿っている。美しい。

 ボーカルのジム・モリソンは儚い命のアーティストである。4年間しか僕らの前には現れなかった。夏の日の蜻蛉のようにも思えてくる。蜻蛉であり蜥蜴の王だった。昨日久しぶりに君が夢に出てきたのだ。そういえば今日は。。。

 

 昨日、横田滋さんがお亡くなりになりました。ご冥福をお祈り申し上げます。

 

おしまい