もう6月。時間には容赦がない。

6月になると思い出すのがレイ・ブラッドベリの「10月はたそがれの国」だ。6月とブラッドベリになんの関係もない。単にタイトルが好きなのだ。10月が黄昏なら9月や11月はなんなんだよとか、他の月は違った国や場所を旅しているのだろうなと思うと楽しくなってくる。そして僕にとって6月が特別な月で、僕は6月に支配されている。この流れはおそらく死ぬまで変わらない予感がしている。

まあ訳の分からない話は別として、この6月5日で横田滋さんがお亡くなりになられて1年である。そして報道としてはあまりにも小さい。

国会ではオリンピックをめぐり「国民の生命と安全」というワードを与党も野党もこれでもかと使っているが、それをいうのなら拉致問題を解決してから言って頂きたい。「国民の生命と安全」を無視し続けてはや40年。産経新聞の報道によると拉致問題特別委員会で2年以上質疑が出ていなく、しかもバイデン大統領に政権が代わって北朝鮮に対して「行動対行動の原則」「戦略的忍耐」などと消極的なのがバレバレで関心すらないのに関わらずだ。

メディアでも取り上げなければ世界から見れば「実は日本人もそんなに重要な事項だと思っていないんじゃない?」と思われるのも自然な流れである。誰が協力するというのかこんな様で。

国会では「国民の生命と安全」を3年間も無視しモリカケ桜注1で時間を無駄にした。拉致問題は国会で審議もされない、報道もしない、審議をしない国会に対しても批判もしないメディアも同様に重罪レベルの非道である。東大卒の役人も政治家も正義感はあるのだろうか?自分に無理な仕事なら民間の有能者に助けて下さい、教えて下さいと請えばいいのに。恥ずかしくないのだろうか?自己の尊厳として。枝野幸男や蓮舫に言いたい。拉致問題解決に向けて尽力すれば見直してやる。

 

おしまい

 

注1 ・・・ 憲法九条に第3項を付け加えると言ったとたんに国会を止めるために何かで騒ぐのが常套手段になっておりそれがモリカケや桜であった。この問題、ここでも書いたが僕からすれば一瞬で改善できるレベルの話だが野党が3年も使って国会を空転させた罪は重い。ちなみに国会の1日にかかるコストは2500万円強と言われている。さらにこれを許した自民党も相当頭が悪いと言わざるを得ない。まさしく税金泥棒で茶番劇だ。

新型ウイルスの陰であまりに小さな扱いが示す僕らの未来。

 ご主人と自分、そして帰宅しない娘の食事をかかさず朝昼晩と三人分を作り続けて30余年、それは帰宅を願う祈りそのものだった。94歳、無念、有本嘉代子さんが力尽きた。夫である明弘さんの体調がすぐれないというのは聞いていたが無念である。

 考えられるだろうか。子供をお持ちの方々は想像してほしい。生死が定かでない行方不明の子供に対し毎日祈り続けようが警察は何もしてくれない。北朝鮮との国家間であるから警察の管轄外であり政府に頼る他ない。その政府が何も出来なかった痛恨の結末。神頼みが唯一のできる事という現実のもどかしさの中で雨の日も風の日もかかさず帰らぬ娘の安否と帰国を祈って食事を作り続けるという事を自分がその立場になったらと想像してみて欲しい。想像を絶する苦悩とやりきれなさを考えて欲しい。自分に出来るだろうかと考えてみて欲しい。

 5年程前に友人と拉致問題について話していたことを今でも鮮明に覚えている。彼の予想は「残された遺族の寿命が切れうやむやになるであろう」という意見に僕は嫌悪感を持った。その時、「この政権は今までとは違う。長く細い道だがやりようはいくつかある。野党議員注1にも積極的に活動している人もいるし僕は悲観はしない。なにより神戸の有本夫妻が当時の社会党に陳情に行き門前払いを受け注2困った挙句行きついたのが当時の安倍晋三だったのだから」と言った。だが現実は彼の言う通りになってしまっているではないか。

 2002年に小泉政権下が電撃訪朝し日朝首脳会談が初めて行われた。何が入っているか解かったもんじゃないことから出された水さえ飲まないのは当然、飲料も食事も日本から持って行った。部屋は当然盗聴されているのを理解した上で同行していた当時の安倍官房長官が「拉致を認めなければ席を立ちましょう」と声を荒げ会見に臨む。そういった事情なのか予想していた事態よりも進展した事態が起こる。金正日があっさり「北朝鮮がやった」注3と拉致を認めたのである。これは返す刀としては一刀両断、最高の切れ味で戦術的に日本は無効化された。私の知らないところで不届き者がやったと言えば刑事事件で国際警察やらなんやらで対処法はありそうだが、対国となればその法律がないのが日本国憲法の現状である。不謹慎な表現だが敵ながら見事にそこを突いてきた。憲法9条に違反するとかしないとかは議論の余地はある、がこの議論によって動けないように封じ込められたのは事実だ。もう18年もこの議論により拉致問題は前進していないというのが厳然たる事実である。だがもう少し詳しく言うとこの問題はタブーとされていて議論さえ「まとも」にされていない。タブーって何だ。ただ「票が取れないからやるだけ損って事」とか言うのではないだろうな。

 これは何も現政権がやるやるといって何も進展していないことを非難する問題ではない。選挙のためのリップサービスと言われればその通りだというのも安倍総理といえども否定は出来ないだろう(トランプ大統領を使ったりアメリカ議会を使ったり前進はあったにせよ、日本の国会では殆ど議論されていないのだから)。我々自身があくまで他人事として傍観しているのが原因、本質の問題なのだ。傍観者は常に冷たく無責任である。ああ、もう本当に私はカスなのだ。このようになっても国会では桜やIRなどという「人命を守るという国の根幹」に関わることの無い論争が続くのだろうが止められない自分がいるのだから。無力感にさいなまれている場合ではなく傍観者は人間のクズなのだと思い改めるべきだ。国会議員は無能ばかりと非難している場合じゃない。ワイドショーで無知識な芸能人の的を外したコメントにうんざりし、メディアに文句を言ってる場合じゃない(鈴木杏樹の不倫の方が大事なのか)。そして傍観者はこのことを頭の片隅に刻みつつ日常を過ごしていくうちに自分の生活に埋没し忘却する。まさに北朝鮮の思い描いた戦略にどっぷりと浸かっている。いいわけないだろこのままで。異常事態を継続させている私たちの罪は重罪に値する。

 有本嘉代子さんのご冥福を祈ると共に明弘さんのご健康と恵子さんとの再会をお祈りいたします。

 

 

注1 ・・・ 松原仁など。

注2 ・・・ 当時の土井たか子事務所。及び外務省と警察庁。当時北朝鮮と密接だった社会党土井たか子はあろうことか北朝鮮に報告したという説が有力。

注3 ・・・ 北朝鮮を理想国家とし擁護していた当時の報道番組ではこの発表にことごとく絶句した。最も有名なのが筑紫哲也である。愚かな極みであるが現状は当時とあまり変わっていない。自由と人権を尊重し人命を守らないリベラルなど存在するのは世界で日本だけである。平和主義と憲法9条がここにも恐ろしく影響を与えていることを知っておくべきである。悲しいことだ。