さて「日銀理論」ですがその前に「需給ギャップ」の話です。これが経済政策の上で超大事なんです。まず基本にここを押さえておかないと全ては空論になります。
これは言葉の通り「需要」と「供給」の「差」です。例えば雑ですが日本全体で見た時、需要(商品のニーズ)が500兆円、供給(商品=工場で生産されるもの)が550兆円だと50兆円分が売れない在庫になります。これはもう在庫が売れない訳ですから新たに作るのを抑えますよね、したがって会社は売り上げが低迷し給料も上がりません。企業は現金に換えないと給料が払えませんから安売りしたりして利益も減ります。これは基本的な不況でデフレの典型、悪い例です。
逆に需要(商品のニーズ)が550兆円、供給(商品=工場で生産されるもの)が500兆円なら商品が不足しもっと造れってことになり残業が増えたりして給料が増えます。物の価格は上がりインフレの典型となります。企業の売上も順調に伸びれば給料も上がりやすいです。給料を上げてくれたら問題はないんですが給料が上がらず物価が上がると生活が苦しくなるのでこれも良くない。
その差を需給ギャップといい、なのでトントンがベストです。ここがポイントです。
で、ここ30年デフレって事で経済成長がまったく横這いなのは需要より供給の方がだいたい40~20兆くらい多かったから。つまり庶民(世間)にお金が出回ってなかったという訳です。世間にお金がなければ工場では作った物が売れず、サービス業も節約で外食なんかが減り失業者が増えるのは当たり前。なので経済政策は失業者の数を見ていると連動性が高いので成功しているか失敗しているかが大体判断できます。そのギャップを埋めるのはその国の政府の仕事です。
これは世界のどんな天才であろうが考え着くのは2つ以外にありません。「財政政策」と「金融政策」の2つです。財政政策は税金で取って配るってそれだけ。給付金が代表例です(減税もね)。金融政策はどれだけお金を刷るかってそれだけ。未来からお金を持ってくる国債発行が代表的です。だからマネーの量を適切に調節するのは政府の最も大きな仕事なんです。需給ギャップで供給の方が40兆円分多かったら補助金や給付金を40兆円つけてトントンにすると景気は安定します。
一気に来ましたがここまで良いですか?
そのギャップを埋めてこなかったのがこの30年。その元凶となっているのが、あ、ここまで来てすっかり言葉を間違えてました(笑)。日銀理論ではなく「日銀券ルール」です(どっちでもいいんですが)。日銀は通貨を増やすのが嫌なので国債発行額より多く紙幣を刷ってはいけないという独自ルールを遂行してきました。理由は日本円の価値が下がるから。そんなの守っててもとっくに日本円の価値は下がってますのでこのルールは間違ってるんですけど。
ちなみにリーマンショックのように世界的大不況になった時、OECD(先進国で作る経済協力機関)の調べでは大体日本以外の国ではマネー量を約三倍に増やしてます。日本はというとなんとちょっと減らしました。これはおかしいってんで当時の総理大臣にこのデータをOECDの良心的な人が渡してます。つまりお金を増やしたがらないDNAみたいなもんが日銀、しいては財務官僚に染みついていて最も経済を停滞させている元凶となっています。日銀や政府は絶対に間違ってないと認めませんけどね。
積極財政とは需給ギャップを埋めて景気を良くし税収を上げようという考え方。その為にはマネーの量を増やすのも厭わない。緊縮財政は景気に興味はなく何が何でもマネーの量を増やさず、増税で一年間の歳入と歳出をトントンにする。これがプライマリーバランスの黒字化と言います。実はプライマリーバランスの黒字化を目指さないと宣言した国はけっこう多いんですよね。日本はほんと珍しいんです。珍しくて成功していたらいいんですがそうじゃない。ここまで経済成長してないのは高齢化とかに逃げないでしっかり経済政策を発動して欲しいものです。
本日はここまで。次回は減税ではなく補助金の訳、そして総まとめです。
おしまい